ガルム放浪記 第十二話ビブロストにて

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由紀に会わせたい人物とは・・・・

  次の日、由紀は会わせたい人物のもとに案内された。案内された部屋のドアを開けるとコルビがある男と話していた。四十代程の男だ。コルビは自分ははずすと言って出ていった。
「由紀、だな。」
男が言う。
「はい、でも・・・あなたは誰ですか?」
由紀が訊いた。男はもどかしそうに口ごもった後
「私は、お前の父親だ。こうなるのをずっと前から分かっていたのに・・・・・すまない。」
由紀は絶句した。父の事は母からちらっと聞いた事があるしアルバムをちらっと見た事もある。由紀の生まれた日に失踪したという。まさか会う日が来るとは夢にも思っていなかった。かと言って別に父に会う事を期待していたわけでもない。
「私の、お父さん、ですか?」
由紀が言う。
「ああ」
男が頷きながら言う。
「私が世界を救う風使いだという事を知っていたんですか?」
由紀が訊き男が頷く。男、つまり由紀の父の話によると由紀は父の所に引き取られそこで風使いとしての技術やその他必要な事を教えられるという。
「そばにいるのが苦になるようなら外に行ってもいいぞ。」
父が言う。
「いえ、そんな事はありませんよ。」
由紀はこの人と仲良くなりたいとなんとなく思っていた。慣れ親しんだなにもかもから引き離されたからだろうか。
 それから父は由紀の風使いの能力の訓練を始めた。彼もまた風使いなのだ。
ひゅ!ざしゅ!
由紀が風の刃(風使いの技の一つ。風で何でも切り裂いてしまう技)で遠くの木の枝を真っ二つにした。それから何発か繰り出し何発か当たり何発かはずれた。
「良い素質があるみたいね。」
コルビが離れた所で見ている由紀の父に話しかけた。
「ああ、練習すればもっとうまくなるだろう。」
由紀の父が言う。
「他の戦闘技術は教えるの?」
コルビが尋ねた。
「ああもちろん。風使いの技を使うのは旅ではなるべく避けた方がいいからな。」
由紀の父が言う。
「やりましたよ。」
由紀が言う。
「じゃあ次は風の強さの調節を教えよう。」
父が由紀に教える。コルビは離れた場所で瞑想を始めた。
<解説>
これから由紀の修行が始まりますね。増田家に父がいない理由が明らかに。ビブロストという名前は北欧神話の人間界と神の世界をつなぐ虹の架け橋の名前です。

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衝撃の新事実ですな!無責任父ちゃんは何故失踪したんですか?う~ん、・・・

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